変化する時代に鍼灸師は何をすべきか?

更新日:2020/05/19

第3回 これから求められる顧客満足度とは?

20200519

 「人と人が接する」ことに多くのメリットがあることを、誰もが信じて疑いません。しかし、その一方で「人と人が接する」ことに重大なデメリットが存在することを新型コロナウイルスは教えてくれました。そのため、with/afterコロナの社会では、人との間隔を一定に保つようになるとともに、不要な外出を避けることが常識化すると思われます。そこで、with/afterコロナの社会において「人と人が接する」ことにどんな意味があるかを考えてみようと思います。
 「人と人が接する」ことが基本であったbeforeコロナの社会では、人と人が接する上での壁である「距離」が大きな問題でした。そのため、人と直接接するために必要なツールである交通システムが発展し、世界中のどこにでも簡単に行くことが可能になったのです。そして、交通システムの発達によって距離の概念が変化しました。東京駅から東京の離島や山奥に行くよりは、距離的には遠くても、お金をかけて飛行機で北海道や沖縄に行く方が時間的には早くなったのです。そうして、人に直接接するにあたって、距離とお金のふたつが重要になったため、お店の多くは交通の便が良い場所を選ぶようになったのだと思います。しかし、コロナ後の社会では、この距離とお金以外にもう一つ大切な要素があることに多くの人が、気が付いたのです。それは、信頼です。
 必要最低限なものや、お金がかからず損をして問題のないものであれば、近場にある人にお願いすることになりますが、大切なものを「頼んだり・任せる」場合、駅の前でお金のかからない場所にあるが信頼のない人よりも、駅から遠くてお金がかかっても信頼のある人に頼むことになるでしょう。その意味で、信頼のある人はお金や距離を超えるのです。特にwith/afterコロナの社会では不要な外出は極力しなくなる傾向であることから、今後求められるものは、近場で済ませられる①「必要最低限なもの」か、②「損をしても問題がないと思うもの」を提供する人、もしくは③「遠くても行きたいと思えるもの」を提供できる信頼のある人のどちらかしかないと思われます。では鍼灸はどうでしょうか。鍼灸が人の健康に関わる職種であると考えると、これから必要とされる鍼灸師は、以下に挙げるどちらかだと言えます。一つめは、医療に近い側、言い方を変えれば「人にとって必要最低限の生活の維持に必要なことで代替ができないもの」。例えば薬以上に生存率やQOLを高めることができる鍼灸師です。そしてもう一方は、その先生を頼りたいと思わせてくれる感動体験や満足度、安心感を与えることができる信頼のある先生です。with/afterコロナの社会では、コンピューターでは与えることのできない、満足度や安心感を与えてくれるものの価値が高まります。そう考えると技術を磨くだけを鍼灸師から、顧客満足度を高める努力をする鍼灸師へと必要性が移っていくのだと思います。
 次回は、連載「変化する時代に鍼灸師は何をすべきか?」の最終回、「独占と共有で見えてくる鍼灸師の将来」について考えてみたいと思います。

明治国際医療大学
伊藤和憲