変化する時代に鍼灸師は何をすべきか?

更新日:2020/04/28

第1回:社会は我々を試している

20200428

 新型コロナウイルスにより様々な影響が表れ始め、社会の抱えている課題が浮き彫りになりました。今までの社会は対面を基本としたコミュニティであり、人と人が会わないと成り立たない社会構造になっています。そのため、人と会うために必要なツール、例えば移動手段が急速に発達し、世界中いつでもどこにでも行くことができるようになりました。その反面、世界中の人と人が頻繁に接することで、地域の出来事はすぐに世界へと広まります。それは、情報だけでなく、今回のような疫病も同様でした。
 そしてもう一つ大切なことが、いつでもどこでも行けることができるようになったことで人々が肉体的にも精神的にも極限まで疲弊し、自律神経をはじめとした身体のホメオスタシスそのものが大きく変化してしまったということです。そのため、その変化に対応できない人々が、様々な病気を患ってしまうことになったのだと予想されます。
 その意味で、我々がこれから行わなければいけないことは、この社会システムの中で疲弊した身体を癒し、治療するパーソナルヘルスと、人と人が頻繁に会い、動き続ける社会システムそのものを変えていくソーシャルヘルスへの関与であると思います。特に人と人が会うことで成り立っている多くのビジネスモデルは、新型コロナウイルスの影響でほころびを見せています。そう考えると、本当に人と人とが会わなければできないことと、人と人が会わなくてもできることを区別してくことが大切となってきます。
 このことは、鍼灸院経営も同様のはずです。我々は、今まで診察から治療をセットとして考えていましたが、人と人が会わなくても行える可能性がある診察や診断と、人が介在しないとできない治療行為は別であると考える必要があるのかもしれません。さらに突き詰めれば、セルフケアを念頭に置けば治療行為ですらも直接人を介在しなくても行える可能性があるとするなら、治療院でしか行えないこと、言い換えれば人と人が会うことでしか得られない顧客感動体験をどのように高めていくのかが鍼灸院の生き残りには重要になってくるのだと思います。
歴史を振り返っても、戦争や疫病などで人口構造が変化したとき社会構造が変化したときに、様々なイノベーションが起こります。その意味で、今は社会がイノベーションされる瞬間であり、我々鍼灸師もその社会の変化についていけるのかを試されているのかもしれません。

明治国際医療大学
伊藤和憲