きょうの養生 橙編

更新日:2020/07/28

ゲームと養生

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自粛期間は価値観と生活様式の転換ポイント

季節の変わり目、土用の真っただ中です。例年通りの気候の変化に加えて、今年は生活様式にも大きな変化が起こりました。急な変化は身体に堪えますね。一層養生に気を配らなくてはと思います。新しい生活様式の実践が望まれる昨今ですが、そんな中で私が最近気になっているのが「ゲーム」です。今回は趣向を変えて「ゲームと養生」について考えていきたいと思います。

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我が家に「あつ森」がやってきた!

皆さんは「あつまれどうぶつの森」(以下、あつ森)というゲームをご存じでしょうか?あつ森は任天堂が開発・発売しているシミュレーションゲームです。ちょうど自粛期間中に発売されて大ヒットしました(発売から6週で1341万本、同ハードのソフト内でも最多の売り上げ)。動物たちと共に無人島に移り住み、ほのぼのとした生活を送ることができます。具体的には魚を釣ったり、花に水をあげたり、住民に挨拶をしたり、家を建てローンを返したりといったことを粛々とこなしていきます。「子供の暇つぶしにちょうど良いだろう」という理由で購入したものの、今では家族全員を巻き込むブームとなり、生活の一部となっています。

ついやってしまう「あつ森」とつい忘れてしまう「養生」

倒すべき相手や目的もなく一見なにが楽しいかわからないのに気が付いたらついやってしまうあつ森。その一方で気が付いたらつい忘れてしまう養生。養生があつ森くらい、ついやってしまえるものだったらみんなが健康になれるはずなのに…そんなことを考えていました。試しに両者を比較してみましょう。養生と一括りにすると幅が広いので、ここでは仮に養生をお灸として考えてみます。

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こうして比較してみると共通の要素も多く、そんなに悪くはない気がするのですが、やはり導入までの差が大きな壁になっているのかなと思ったりもします。他にも色々あるのでしょうがこのあたりは今後の観察テーマです。

親切になった「世の中」、親切になれなかった「養生」?

現代の私たちの身の回りにあるものは、すべてがひと昔前とくらべるとものすごく親切に作られています。家電製品なら説明書を読まなくてもすぐ使えるようになっているし、多少複雑なゲームやサービスでも一度チュートリアルを体験すればある程度のことはできるようになっています。その一方で我々の提供する養生は親切に進化できているのでしょうか?。「試してみたけどわからなかった」「続けられなかった」なんていう声は枚挙に暇がありません。

養生は患者さんの日常の隙間におこなっていただくものです。であるならばゲームよりわかりやすく、楽しくて(快適で)、ついつい続けてしまうというのは必要な要素ではないでしょうか。ゲームに限らず、私たちが日常の中でついやってしまうもの、やりたくなってしまうものから大いに学んで養生をアップデートしていかなくてはと思うわけです。そんなわけで本日もあつ森に興じようと思います。遊びも勉強です。

参考図書
『ついやってしまう」体験のつくりかた 人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ』 玉樹 真一郎

プロフィール
鋤柄誉啓(すきからたかあき)|鍼灸師。新町お灸堂院長。愛知県生まれ。明治国際医療大学卒。施術の傍らお灸と養生にまつわるプロダクトの開発やブランディングを行う。SNSで養生についての発信。『きょうの灸せんせい(秋田書店)』『ふれあい灸活プログラム(フェリシモ)』監修。