本日のお品書き

更新日:2020/08/25

鍼灸師という仕事~クラシックでクリエイティブ 五棹「多様性という孤独」

20200825

 鍼灸業界には、エビデンス重視の西洋医学系から摩訶不思議な古典系まで、それはもう多種多様な流儀を持った人達が集っています。また鍼灸師といっても開業している人もいれば、お勤めの人もいます。臨床と教員の二足の草鞋を履いている人もあれば、研究に没頭しするために教員専業の人もいます。
 同業者とはいえ各々が自分の道を歩いているわけで、その道を歩むことになった理由もそれぞれあり、語られることのない事情だってきっとあるはず。言い方を変えれば、鍼灸師という「異業種」の人がいっぱいいるということです。

・鍼灸師になったきっかけ
・学生時代に出会った先生
・最初位に就職をした鍼灸院で学んだこと
・臨床での成功体験と忘れ難い失敗
・開業時に背負った借金
・暮らしている街の鍼灸に対するニーズ……などなど

 鍼灸師の人生を決定づける出来事について思いつくまま書き出せばキリがなく、「鍼灸とは?」と問えば、当然のことながら その答えは人によって違うわけです。
 つまり100人が「鍼灸院」という看板を掲げていても、提供している技術や、患者さんと一緒に達成したい目標が違うということ。もしかすると、「こんなチャラいPRなんてしたくないのにな〜」と思いながらも、経営のために仮面を被っている人だっているかもしれません。

 「見えているモノと、提供したいコトが違うかも?」

 近年では各院がホームページを開設することも当たり前になり、またSNSが身近になったので、鍼灸師のメッセージにリーチしてもらいやすくなったと思います。インターネットが登場する前に開業されていた先輩達は、広告規制と戦いながら、きっと大変な思いをされてきたのでしょうね。
 海外との取引が多い大企業の人事曰く、「一番採用したい人物は、伝えるべきことが理解できていて、英語が話せる人。伝えるべきことの理解度が素晴らしければ、英語が話せなくても採用です。採用しないのは、英語は喋れるけれど、何を伝えれば良いか理解できていない人」と。鍼灸で言い換えれば、治療理念が明確で、ホームページなどの手段を使いこなせているのが最高。Webが使いこなせるだけなのは……。

 キャリアが長くなってくると色々なことに対応できるようになりますし、周囲からの期待も大きくなってきます。そうなると勉強に打ち込むようにもなるし、チャレンジしてみたくなることだって増えてきます。でもノッている時は、自分を見失っていることにすら気付かないことだってあります。

 「なぜ、鍼灸師になったんだっけ?」

 自分が鍼灸師として為したい未来(=メッセージ)がハッキリしていると、軸がブレなくなります。つまりは本当に為したい仕事を実現し、伝えていけるようになるのです。
 その時に同業者からの評価や批判を気にしすぎると、自分の道を歩めなくなることがあります。でも先述した通り、そもそも同じ歩幅で、同じ目標に向かって歩いている人はいません。しかも、個性的な思想や自由な発想ができる人は、そもそも少数派なのですから、周囲に賛同者がいなくて当たり前。

 鍼灸師という少し風変わりな職業を選んだボク達は、一般的な人たちに比べて健康や人生に対してコダワリ(=治療理念)があります。伝えるべきメッセージを研ぎ澄ませるために、先輩たちの経験談や失敗談を踏み台にして、自分の理念を創って欲しいと思っています。

 ボク達が社会に伝えきれていないメッセージを、もしかすると若い後輩たちの言葉と手段で届けてくれるかもしれない……と、少し期待をしているのです。

鍼灸Meridian烏丸
中根はじめ