きょうの養生 藍編
更新日:2020/09/03
季節の移ろいと養生的な生活 その3

数えてみたら12年ほど使ったガスコンロを、春先に買い替えました。これまで使っていたのは、引っ越したときに間に合わせで買ったもの。
私は掃除を習慣的に行うのがあまり得意ではなく……いや、苦手で、京都で鍼灸院を開業する前、スポーツの現場でアスレティックトレーナーをして激しく働いていた間は、家の様子はそれはそれは恐ろしいありさまでした。
毎日料理はしていたので、ガスコンロには汚れが少しずつ重なるようにたまり、気にはなりつつも忙しい日々の中では手をつけることができず、結局、年に数回ある連休のときに一念発起してつけ置きや煮洗いなど大掃除レベルの掃除をすることに。大掃除レベルの掃除をすると、その時はやりきった!という気持ちよさがあるのですが、すぐにまた「汚れてるな……」といまいちスッキリしない日々を過ごすことになります。取り切れない焦げ付きや汚れもあり、いつの間にかずいぶんくたびれた感じになっていました。
そんな私が今回買ったのはなんと、汚れの目立つ「白いガスコンロ」。一目惚れと、年度末の値引きにひかれて!それに、もうあの頃の自分とは違う!というかすかな自信を持って。
スポーツの現場で働いていた頃は、今より若く、良くない意味での体育会的な精神性を自分に押し付けていたこともあり、日々の自分の養生をおろそかにしていました。日々こつこつと行動を積み重ねることをせず、がまんと勢いで乗り切っておいて、年に数回のまとまった休み(学生の定期試験の数日間)にどうにか休んだり、数年に一度倒れたり。ガスコンロの大掃除が必要になるのと同じ理屈です。
今は鍼灸院で毎日元気に仕事をするために、毎日早寝早起き、季節や体調に合わせて食べて、少しの運動を毎日。大きなリセットではなくて、毎日、もしくは数日単位での小さなリセットをすること。それを少しずつできるようになってきて、ほぼ元気でい続けることができているので、今の私なら白い素敵なガスコンロ、きれいに保てるんじゃないか、というチャレンジでした。
半年近くがたった今。白いガスコンロは真っ白に、五徳にもひどい焦げ付きを作らないで済んでいます。正直、毎日とは言えませんが、数日おきには汚れを拭き取り、五徳を洗う。たいした手間ではないけれど、ためないことできれいに保てる。
人の体は買い替えることができないし、今さら真っ白!にはできないけど、手間のかけ方は結局この「ちょっとずつ、もとに戻す」しかないのは同じこと。最終的には、こつこつとちょっとずつの養生でジリジリと心身の調子を良くして保ってもらうのがいちばんいい方法なのだけど、鍼灸院での施術は、ある意味「大掃除」のような体験をしてもらえるとは言えるのではないでしょうか。買い替え、ではなくて、私の体こんなにいい感じだったんだ!という、もともとの本来のよさを体感できるような。その清々しさを感じれば、毎日のこつこつとした養生をする気持ちにもなるというもの。
白いガスコンロとの付き合いもまだまだこれからです。最初の清々しさを忘れないように、こつこつとコンロを掃除する余裕を持つためにも、養生していきます。
安東 由仁(あんどう ゆに)
鍼灸師/日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。筑波大学体育専門学群、明治東洋医学院専門学校卒。アメフト・サッカーの現場で20年アスレティックトレーナーとして活動した後、京都の町家で「ゆに鍼灸院」を開業。暮らしに根ざした、現実味のある養生を目指しています。2018年生まれの怪力男児を育児中。